はじめに
成年後見も家族信託も、認知症や判断能低下時の財産管理に対応できる仕組みです。
成年後見と家族信託の使い分け
具体的には、以下のような使い分けが考えられます。
●成年後見をご検討頂きたい方
・財産をお持ちの方が既に認知症等、判断能力が低下してしまっている(=信託契約不可)。
・おひとり様でいらっしゃる等、財産を託し、面倒をみてくれる親族がいない。
・親族間でトラブルを抱えており、公的な外部専門家の監督を受けながら生前の財産管理を行っておきたい。
⇒ 以上の方は、家庭裁判所が選ぶ第三者の専門職に後見人や監督人になってもらい、家庭裁判所の監督のもと毎年報告を行いながら、厳格に財産管理や介護契約等の身上保護を行うことができる、成年後見制度の活用をおすすめします。
※当事務所では、ご家族様ごとのご事情に合わせて、適切な制度の使い分けをご提案させて頂きたいと考えおります。
●家族信託をご検討頂きたい方
・信頼出来る親族に財産管理をお願いして、家族で財産管理をしてもらいたい。
・代々財産を継いでいってもらいたいので、相続税対策に向けたアパート建て替えや積極的リノベーションもして欲しい。
・株式などの投資運用も継続してほしい。
⇒ このような願いは、残念ながら後見制度では原則として不可能ですので、家族信託をおすすめいたします。
成年後見制度の見直し
後見制度について、利用をやめることが出来るようにすべき、といった制度改正の議論がされています。
【参考】成年後見制度の見直しに向けた検討経緯や中間試案で取り上げられている主な論点について、簡易に要約したもの
「民法(成年後見等関係)等の改正に関する中間試案に関する参考資料」(令和7年6月:法務省民事局)参照。
そこで、今後の改正動向を注視しつつ、適切な制度の選択をして頂ければと思います。
この議論の中では、法定後見でない方法を優先させる考え方(補充性)も紹介されており、その具体例としては、「信託」も明記されています。
法定後見でない方法によって本人の課題を解消することができ、法定後見による保護をするまでもないときは、法定後見でない方法を優先させ、法定後見を開始しないものとするとの考え方がある。なお、このような考え方は、「補充性」という用語を用いて説明されることがある。 ここで、法定後見でない方法としては、例えば、任意後見、委任による任意代理、信託等のほか行政等による支援も想定される。
【民法(成年後見等関係)等の改正に関する中間試案の補足説明】(令和7年6月:法務省民事局参事官室14頁)
現行の成年後見と家族信託を比較
成年後見 |
家族信託 |
|
---|---|---|
認知症発生後の積極的・柔軟な財産管理 |
不可 |
可能 |
財産管理者 |
裁判所が決定 ※財産額によって、第三者専門職(弁護士、司法書士など)が選ばれる場合が多く、家族が後見人になる場合でも、第三者専門職が「監督人」として選任されます。 |
家族 (本人が選ぶ) |
財産管理内容の 裁判所への報告 |
毎年必要 (事務報告書・財産目録等を提出する必要があります) |
不要 (受益者に報告は必要です) |
財産管理者の 報酬 |
横浜家庭裁判所で第三者(弁護士等)が選任された場合、管理財産額が1000万円を超え5000万円以下の場合でも、基本報酬額は月額3万円~4万円、管理財産額が5000万円を超える場合には基本報酬額が月額5万円~6万円かかります。 |
不要 (報酬を定めることも可能です) |