現在の法定後見制度の課題
現在の制度では、法定後見制度を利用するきっかけが解決しても、判断能力が回復しない限り利用をやめることは出来ません。
よって、認知症になってしまわれる前に、家族信託等で生前対策を準備しておくのが重要です。
今後の検討課題(制度改正)
以上のような課題から、「後見開始の際に考慮した必要性がなくなれば終了する」、といった制度改正の議論がされています。
【参考】「民法(成年後見等関係)等の改正に関する中間試案に関する参考資料」(令和7年6月:法務省民事局(成年後見制度の見直しに向けた検討経緯や主な論点の要約)
後見法改正後の実務運用?
特に、不動産売却や定期預金解約、遺産分割で得た預貯金の管理について、ご本人様の判断能力が回復していないことを前提に、金融機関がどのように対応するのか(極端な例としては、後見制度の利用を終了した途端に預貯金凍結されないか?等)は、非常に重要なポイントになろうかと思います。
※対応策として、任意後見契約(即効型)、後見制度支援信託や支援預貯金の後見手続外での利用、その他信託商品等の金融サービスの活用、任意代理、自動引落設定の完了、支援者登録制度(本人単独取引を補助する仕組みとして)等の活用が議論されています。
【参考】後見終了と預貯金取引に関する議論
・法制審議会民法(成年後見等関係)部会第11回会議(令和6年12月10日開催)部会資料8
・法制審議会民法(成年後見等関係)部会第18回会議(令和7年4月15日開催)「預貯金取引の代理権の必要性が喪失する場面についての整理」ほか
※その他、法定後見でない方法に関して、法改正の議論をしている部会においては、行政等の支援の一例として日常生活自立支援事業を指摘する意見も出されていました。
確かに、この事業(金銭管理サービス(日常生活に必要な費用の支払いや、預貯金の出し入れ)等)を後見終了後の仕組みとして利用出来れば有用と思われます。
しかし、横浜市によると、課題として、
「日常生活自立支援事業利用者のうち、必要な方について、適切に成年後見制度に移行する取組を進めているが、現状においても利用希望者の待機が課題となっている。終了後の見守りの一つの仕組みと考えるとしても、現在の事業スキームでは担うことは困難であり、仕組みの整理や体制強化が課題」とされています。
(法制審議会民法(成年後見等関係)部会 第8回会議 横浜市・中核機関よこはま成年後見推進センターの取組19頁)
まとめ
以上より、法改正により後見終了できる仕組みが「法制度」としては出来たとしても、以上のような現場の実情、金融機関の現場対応等の見込みを踏まえて、
・本当に現実問題として後見終了できるのか?(預貯金管理に問題は生じないか?)
・終了するための具体的な条件(制約)は何か?
等も含めて、今後の改正動向を注視しつつ、適切な制度の選択をして頂ければと思います。