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【弁護士が解説】遺言を書いておけば、家族信託までしなくてもよいですか?

以下の2つのポイントを検討し、必要に応じて、家族信託も併せて検討した方が良いでしょう。

<遺言では対応出来ない2つのポイント>

 ①認知症対策

 ②確実な財産承継の実現(相続法改正により遺言では不可能に!

家族信託を検討することは、大事に築いてきた家族の財産について、ご家族皆さんでお話しされる良いきっかけにもなります。

①認知症対策

遺言は、(当然ですが)ご本人様がご逝去して初めて効力が生じます。
そのため、例えばご本人様が認知症になり、弁護士等の専門職が成年後見人に選任された場合、遺言が作成されていることを知らずに後見人が財産を処分してしまい、遺言内容が実現できなくなってしまうリスクがあります。たとえ弁護士が後見人であっても、遺言を作成しているか調査する権限は与えられていないからです。

※その他、成年後見制度を利用する場合の注意点はこちら

また、遺言はいつでも書き換えられますので、遠方の親族が財産目当てで判断能力の低下したご本人をけしかけて、全て自身に遺贈する遺言に書き直させてしまうリスクもあります。

残念ながら、弁護士業務をしていると、このような事案にもしばしば出くわします。中には、相続争いの前哨戦として親御さんの囲い込み合戦が始まってしまい、せっかく締結していた任意後見契約まで一方的に解除させてしまうケースさえあります。

この点、家族信託であれば、生前から家族信託契約により財産を受託者に移転することができ(=相続財産からも外れます)、

後見人による財産処分や、判断能力低下後の書き換えのせいで、遺言での想いが実現できなくなってしまうことを回避することが出来ます。

②確実な財産承継の実現(相続法改正により遺言では不可能に!)

 ご本人様ご逝去後、確実に財産承継が実現できることも、遺言では不可能となった、信託の重要なメリットです。

 なぜなら、相続法改正により、せっかく遺言があっても、相続財産を勝手に処分されたり、浪費家の相続人債権者から差押えを受けてしまうと、遺言での財産承継は不確実なものになってしったからです

 (専門的に説明すると、相続による権利の承継のうち、相続分を超える部分については対抗要件を備えなければ第三者に対抗できなくなり(民法899の2)、仮に遺言執行者がいても、遺言執行妨害行為禁止規定に違反した行為については善意の第三者に対抗できなくなってしまいました(民法1013②ただし書))。

 そのため、推定相続人に、財産を勝手に処分してしまいそうな人や、浪費家等がいる場合には、要注意です!!

 この点、信託であれば、被相続人となる委託者の財産を、生前に信託契約で受託者に移転しておくことで、このような勝手な処分等は回避できます。

さいごに(家族会議のきっかけ作りとしての「信託」)

 家族信託を検討することは、大事に築いてきた家族の財産について、ご家族皆さんでお話しされる良いきっかけにもなります。

 そもそも、「遺言を書いて!」とは、なかなか言い出し辛いのではないでしょうか?

 どうも「遺言」は、親子ともに「死」を意識させてしまうようです(遺書のイメージ??)
    親:まだ遺言を書くような歳ではない
    子:「遺言を書いて」とは言い辛い・・・

 その結果、「管理」(認知症対策)不可は勿論、「承継」でもトラブルになってしまう、という不幸なケースが非常に多いです。

 このような話し辛い「相続」の話を、「信託」の話を入口に始めてみて、
 親子双方が家族を思いやり、一番良い形を見つけて頂ければ幸いです。

 家族会議のきっかけ作りとしての「信託」。是非、検討してみてください。

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この記事を担当した弁護士
みなと綜合法律事務所 神奈川県弁護士会所属 海野千宏
保有資格弁護士・民事信託士・宅地建物取引士
専門分野家族信託(組成支援、金融機関における信託契約書審査、設定済み信託をめぐるトラブル対応等)、遺言相続、成年後見、不動産トラブルなど
経歴信託法学会会員 一般社団法人民事信託推進センター理事(マンション支援信託推進委員会委員)
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